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アフリカの民話

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アフリカの民話III~王様と細工師

王様と細工師

昔々、アマニという国にマヒンボという名のとてもわがままな王さまが住んでおりました。おまけにその王さまは、とても金持ちでした。しかし、国民の誰一人として彼が金持ちで有名であることを喜んでおらず、仕事ができて、知恵を持った人の方が賢いと思っておりました。しかし、このことを王様にはっきりと申し出る勇気のある人は、一人もおりませんでした。
このアマニという国には貴金属を細工する大変有名な細工師がおりました。その評判はその村だけではなく、国中に広まり、王さまの耳にも入りました。王さまはそれを聞くとたいそう怒り、この男を捕まえて殺してしまおうといろいろたくらんでいました。王さまは自分一人が有名でいたかったのです。
ある日、王さまは細工師を法廷に出てくるように家族に使いを出しました。このことを聞いた千人の人々が集まり、細工師が裁判所にでて何を言うか聞きに来ました。
王様は部屋に入ってくると、柵に入れられた細工師をのぞきこみました。そして細工師をふり返って言いました。
「有名であることはいいことだ。しかし、他の人にとっては迷惑なことだ」細工師の方を振り返ってつづけました。
「どの職人も技術があるかどうかは法廷が決める。ところで、貴金属で人のようにしゃべったり、歩いたりするものを作るように命令する。四十日の時間を与える。もし、失敗したらお前の命はないぞ」そういうと、屋敷の方へ帰っていきました。
このことは、人々をあわてさせました。しかし、王さまが恐いばかりで何も言うことができません。細工師は王さまの力を弱めたいと考えました。
一ヶ月が過ぎても王様の要求したものは出来ません。鉄を溶かす仕事は時間がかかるのです。細工師は望みを断たれてしまいました。友人たちに別れを告げると旅にでました。

旅の途中で、ある村に着きました。そこで昔、友人だったムトングジャに出会いました。彼は呪術師でした。彼は細工師に聞きました。
「お前さん、何か元気がないようだ。どうしたのだ?」細工師は今まであったことを話して聞かせました。友人は大笑いし、細工師に言いました。
「明日、王さまのところへ戻りなさい。そして王さまに言いなさい。もし金属で作った、歩いたりしゃべったりするものを欲しいなら、袋に二つの炭、その炭は奥さんたちの髪の毛でつくったもの、それと子供たちの涙を缶に二つ持ってきなさいと」
そういうと彼はどこかへいってしました。
細工師は友人の呪術師のことを信頼していましたが、このことをほんとうに実行したら、王さまを怒らせることになると考えました。
しかし、あと十日で命が無くなることを思えば、呪術師に言われたものを提供するよう王さまに申し出ることを決心しました。
次の日、細工師は法廷に出廷しました。大臣と王さまは細工師を見ると「有名な細工師よ、命令したものはできたのか?」「王さま、まだ出来ておりません。」細工師は恐る恐る言いました。
「なぜならば、その生き物を作るには必要なものがあります」「一体、何が必要なのか言って見なさい。欲しいものはなんでも持ってきてやろう。おまえの命は私のものだから」と細工師に王様は言いました。
「私の必要なものはそんなに大きい品物ではありません。もし、あなたがしゃべったり、あるいたりするものが欲しかったら麻袋二つに奥さんたちの髪を炭にして詰めること、もう一つは、缶二ついっぱいにあなたの子供たちの涙を集めてきてください。期限は一週間です。」と細工師は言いました。
人々はこれを聞くと驚き、細工師はすぐに殺されるのではないかと心配しました。
しかし、王さまは「一週間以内で言ったものはすべてそろえる」王さまは屋敷に帰ると、言われたものを用意しようとしました。
彼は六百人の奥さんの髪の毛をそり、燃して炭にし、千人の子供に缶二つ分の涙を持ってくるように命令しました。この命令により、王さまの妻たちは朝から晩まで一週間の間、髪をそり、炭にし、子供たちの涙も集めました。しかし、一週間が経ってもまだ、集まりません。大臣たちにこの仕事を続けるように命令しました。大臣たちは王様に六十袋の髪の毛を集めたと報告しました。しかし、燃やすとこぶしくらいの大きさにしかなりませんでした。涙は、おわん一杯くらいしか集まりませんでした。王様は怒りました。次の日、細工師を呼びました。
細工師は、王様がすべて集めたのかと思いました。
この日、人々はきっと細工師が困ることになると思い、法廷に駆けつけました。王様は椅子を蹴ると法廷の真中に立ち、細工師に言いました。
「おまえの言ったものは手にはいらなかった。」
細工師は王様の目をにらみつけました。
「有名で知恵のある王様よ、私の言ったものが手に入れられないとはおかしい。仕事に熱中しなかったのだ」
そこにいた人々は、この細工師の王様に対する非難の言葉を聞くと、そこがまるで、喪中であるように静かになりました。
王様は振り向いて言いました。
「私は今日、引退する。あなたは賢い。あなたは私の国の大臣になれる」
細工師は王さまに向かって腰をかがめていいました。
「ありがとうございます。私は有名になれました。しかし、友人のムツングジアの知恵なしではこのことは、ありえませんでした」
法廷にいた人々はこの言葉を聞いて驚きました。王さまはこれを聞いて感心しました。「このムツングジャを法廷に連れてきなさい。今日から、大臣の一人にしよう」そう言うと、王さまはムトングジャを迎えるために、護衛隊をつかわしました。
ムツングジャは大臣になり、王様は性格を変え、国民は親しみを持ち、尊敬するようになったということです。
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by sungura | 2009-08-20 17:30