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アフリカの民話

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アフリカの民話III~老ガメのたくらみ

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ムリンガという山奥に精霊が住んでおりました。
精霊は、面白くてワクワクするようなお話しをたくさん知っていることで有名でした。都の王さま、大金持ち、勇敢な兵士でさえ精霊のお話しを買いたいと申し出ました。しかし、その度に、精霊は難しい質問に答えるよう要求してきました。彼らのほとんどがこの要求には答えられず、命さえも落としました。老ガメはこの話を聞くととても興味を引かれ、精霊に会うためすべてを捨てて旅にでました。
ムリンガの山頂に着くと、老ガメは精霊に言いました。
「私はあなたの話しを聞きに来ました」
それを聞くと精霊は内心、老ガメを食べてしまおうかと考えました。そして食べ終わった時の言いわけまで考えていました。
精霊は老ガメを軽蔑して言いました。
「老ガメよ!おまえは、何を追っかけているのだ?」
「私は、あなたに言ったはずです。あなたの話しを買いに来たのです」
といささか怒って答えました。
精霊は老ガメをじっと見ながら、ののしるように答えました。「お前は私の話しを買ってどうしようというのだ。お前は足が短いし動きが遅い。ニワトリの方がましだ。そんなやつが私の話を買うことができるのか?」
こう言われても、老ガメは全く動じませんでした。
「私はあなたの話しを買うために来たのです。時間を無駄にしたくはありません。だからいくらで売ってくれるか早く言ってください」
精霊は笑って言いました。
「老ガメ、良く聞けよ。私の要求はむずかしいぞ。私の話を買おうとして、都の王様、金持ち、勇敢な兵士でさえ失敗して命を落としている。私の話しを買うという考えは捨て、すぐにここから立ち去りなさい」
「私はその話を買いたいのです」老ガメはためらわずに答えました。
「もし失敗したらどうするするつもりだ」
「失敗したら私の頭でもお腹でも食べて下さっていいです」
精霊は老ガメの大胆さに驚き、老ガメの気持ちを変えることは不可能だと考えました。
「それなら黙って聞きなさい。もし私の話しを買いたいのなら、大蛇の王様、豹の王様、軍隊蜂の女王、海の精霊の王様すべてを連れてきなさい。それも、一週間以内だ。間に合わなければおまえの頭と腹はいただくぞ。」
老ガメは精霊を見つめました。
「よし、わかった。すべてのものを持ってきましょう。失敗したら私の妻と子供も差し出します」
老ガメは家に着くと妻に今までのことをすべて話しました。「お前さんの行動はなんて愚かでしょう。精霊の欲しいものはどれをとっても全部危なくて手にいれるのは不可能です。お前さんは殺されてしまいます。精霊の話しって一体どんな価値があるんですか。お前さんはいつの間に約束してしまったの」と泣き出しました。
老ガメは妻をなだめて言いました。
「心配はいらない。精霊の要求を成し遂げる方法をすでに考えてある。それについてはお前にお願いがある。お前の助けが必要だ。私の頼んだことをやってくれればいい」
やがて老ガメは妻と一緒に家を出ました。しばらくして大蛇の王様が住む川辺に着きました。そしてバナナの葉っぱ十枚を切るとそれでたくさんのひもを作りました。
少し行くと、老ガメと妻は川べりで太陽に当たってのんびりと夢を見ているような姿の大蛇の王様に出会いました。
老ガメの奥さんは乾いた草をゆすりながら、大蛇に向かって大声で一人ごとを言い始めました。
「私の旦那様、あなたは世間でいう美しいことと醜いことの違いがわかりますか。よく見てごらんなさい。あの動物の醜い顔、サイの方がよっぽどましでしょう。そしてあの体の長さは何でしょう。それにしても、最近あなたは年をとってきました。体の長さもバナナの葉っぱと比べると何と短いことか。見てごらんなさい。
大蛇が体をくねらせはじめたようです。しっぽがどこにあるかわからないくらいです」
老ガメが妻に言いました。

「私が思うには、大蛇が体を伸ばしたら力が弱くなる。バナナの葉っぱ一枚の長さにも満たない」
この会話を聞いていた大蛇の王様は振り向いて言いました。「お前達は、どうして口げんかしているのだ」
老ガメは恐くて体を震わせながらも言いました。
「大蛇の王さま、口論しているのは私の妻です。妻は毎日あなた方はバナナの葉っぱ十枚ほどの距離を歩くのに比べて、私たちは、わずかバナナの葉っぱ一枚ほどの距離も歩クコとができません」
大蛇の王様は老ガメの言ったことに大笑いしました
「そう思うなら測って見れば良いではないか」
老ガメは草をもって大蛇の王様の所へ行き、背中を横倒しにすると、体を真っ直ぐに伸ばすように言いました。
大蛇の王様は、老ガメの言うように用心しながらゆっくりゆっくりと体を伸ばし始めました。カメの夫婦はいらいらして
「まだか、まだか」
とせかせました。
「もう少し待ってくれ、早く測ってくれ、もう少し伸ばすから」と言い終わるか言い終わらないその瞬間、老ガメと奥さんが大蛇の王様をひもで強く縛ってしまいました。
「まだ終わらないのか、早く終わってくれ、少し休ませてくれ、体を伸ばすのに疲れてしまった」
大蛇の王様は疲れ果て、老ガメに頼みました。
老ガメは振り返って言いました。「あなたは、もう体を折り曲げることはできないぞ。私の言いなりになって、あなたはなんて愚かだろう。これからあなたをムリンガの精霊のところへ連れて行く。ムリンガの話は私がもらうことになる」
大蛇は老ガメに放してくれるように懇願しました。しかし、彼は聞き入れず、また旅を続けました。
ムリンガの山頂につくやいなや精霊は老ガメに言いました。
「あと約束のものを持ってこい」
老ガメはすぐに家に帰りました。家に着くやいなや、鎌と斧を持ってくると、豹が獲物を獲っている場所まで一気に走っていきました。
そこで、老ガメは長い横穴を掘りました。そして見えないように草で上手にふたをしました。二日め、老ガメはひょうたんにお酒を入れ、正午の祈りの時間にあわせて、ひもを持って横穴へ入っていき、待ち伏せました。しばらくすると、豹の王様がやってきました。
「お前さんはそこで何をしているのだ」豹の王様はしゃべろうとするのですが、のどが渇いていたので声がかすれていました。
老ガメは言いました。
「豹の王様、あなたはのどが渇いているようですね。私が作ったお酒を飲ませてあげましょう。」
豹はそのひょうたんを受け取ると飲み始めました。老ガメに少しの飲むようにいわれたにもかかわらずのどの渇きは激しく、酒は美味しかったので全部飲み干してしまい、死んだように寝てしまいました。
老ガメは、近くの穴に隠れて見ていました。豹がいびきをかいているのを聞くと、すぐさま豹の王様をムリンガの精霊のところまで背負っていきました。
ムリンガの精霊は豹の体にさわると
「よくやった。もうひとつのものをもってこい」
老ガメは家に帰ると人形を作り、ドリアンの実からしぼったどろどろの液を塗りました。
次の日早く、海岸までその人形を持って行きました。海の精霊の王様の娘は草をいじりながら遊んでいました。老ガメは砂の上に人形を横たえて美味しいさつまいもの入った器を置きました。
海の精霊の王様さまの娘と他の精霊たちが砂浜で遊んでいました。彼らはその人形を見ると少しずつ動かしながら、人形に話しかけました。しかし人形は黙っていました。人形はさつまいもで作ってありました。海の精霊の王様の娘も他の精霊たちもさつまいもが大好きでしたので食べようとして言いました。
「その人形を起こして、顔を平手打ちすればいい」
海の精霊の王様の娘はその人形に平手打ちをしました。すると手がくっついてしまいました。放そうとすると、もう一方の手もくっついてしまいました。海の精霊の王様の娘はどうにかして手を放そうとするのですが出来ません。他の霊の娘たちが言いました。
「足で人形の腹を蹴ってみたら」
そういわれて右足で蹴りました。左足でも蹴ってみました。とうとう両足がくっついてしまったのです。
隠れてみていた老ガメは精霊の娘の姿を見ておかしくなりました。そして隠れていたところから出て浜の方へ歩いて行きました。海の精霊の子供たちは老ガメを見ると逃げていってしまいました。
老ガメは海の精霊の王様の娘を背負うとムリンガの精霊の住む山へ行きました。いつものようにムリンガの精霊は海の精霊の王さまの娘にさわると
「わかったぞ。よくやった。約束した残りのものを持ってこい」
と命令しました。
老ガメは一目散に家に帰りました。家に帰ると妻に大きいひょうたんを持ってこさせ、急いで女王蜂と兵隊蜂が住んでいる巣の近くまで一気に突進しました。怒った兵隊蜂が老ガメを刺そうと巣の近くまで来ていました。老ガメは叫びました。
「私は何もしません。あなた方を助けにきたのです」
兵隊蜂は老ガメの言うことを信じません。女王蜂は老ガメの叫びを聞き、何が起こったのか説明するように言いました。
老ガメは、蜂の女王のところに着くと蜂蜜をもらいました。
「おお前は何をさがしているのだ」老ガメは女王蜂を見ながら
「私はあなたを救うためにやってきました」
「私は兵隊蜂をもっている。お前さん何のために私を救いに来たのだ」
「女王蜂よ、聞きなさい。もっとすごい敵がいるのを知らないのか」
老ガメは続けて説明しました。しかし女王蜂は老ガメの言うことに関心を示さず、強気に聞きました。
「もっと強い敵って何だ」
「女王蜂よ。それは火だ」
「火か?それはたいへんだ。我々は襲われてしまう。しかし、カメよ、お前たち、どうしてその事を知っているのだ」
女王蜂は聞きました。老ガメは女王蜂を遠ざけると説明しました。
「昨日、畑から家に帰ると、火の夫婦に会いました。火は今晩攻めに来ると言っている。だから、早くあなたに知らせようと考えたのです」
女王蜂は震えながら老ガメに訪ねました。
「おまえは私たちを助けてくれるのか?」「私は大きなひょうたんを持ってきた。お前さんの兵隊が中に入ったら、火はどこからも入ってくることが出来ないし、ひょうたんは硬いから破れることはない」
言い終わるか終わらないうちに女王蜂は兵隊蜂にひょうたんの中に入るように命令し、最後に女王蜂も入りました。全員が入ると老ガメはとうもろこしのからでひょうたんの口をふさいでしまいました。すぐにムリンガの精霊のところに行きました。老ガメの奥さんは妊娠していました。
ムリンガの精霊は老ガメが背負っているひょうたんを見つけました。そして老ガメの奥さんと子供たちも一緒でした。精霊はお話のいっぱい詰まった箱を持って来ました。そこで老ガメは精霊に聞きました。
「私は女王蜂とその兵隊蜂と、私の母親と子供も連れて来た」
精霊は老ガメに微笑むとひょうたんにさわり、お話のいっぱい入った箱を差し出しました。これを持っていきなさい。今日からこれらのお話はすべてお前さんの財産だ。よくやった」
老ガメはその箱を家に持って帰りました。しばらくすると、そのニュースは国中に伝わり、それを買いに来たり盗もうとさえするものが現われました。
それ以来、カメは背中にいつも箱を背負っているような格好になってしまい、いつも箱が気になって首を上げ、あたりを見回しているようになったということです。
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by sungura | 2009-08-20 17:26