アフリカの民話

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アフリカの民話III~王様と細工師

王様と細工師

昔々、アマニという国にマヒンボという名のとてもわがままな王さまが住んでおりました。おまけにその王さまは、とても金持ちでした。しかし、国民の誰一人として彼が金持ちで有名であることを喜んでおらず、仕事ができて、知恵を持った人の方が賢いと思っておりました。しかし、このことを王様にはっきりと申し出る勇気のある人は、一人もおりませんでした。
このアマニという国には貴金属を細工する大変有名な細工師がおりました。その評判はその村だけではなく、国中に広まり、王さまの耳にも入りました。王さまはそれを聞くとたいそう怒り、この男を捕まえて殺してしまおうといろいろたくらんでいました。王さまは自分一人が有名でいたかったのです。
ある日、王さまは細工師を法廷に出てくるように家族に使いを出しました。このことを聞いた千人の人々が集まり、細工師が裁判所にでて何を言うか聞きに来ました。
王様は部屋に入ってくると、柵に入れられた細工師をのぞきこみました。そして細工師をふり返って言いました。
「有名であることはいいことだ。しかし、他の人にとっては迷惑なことだ」細工師の方を振り返ってつづけました。
「どの職人も技術があるかどうかは法廷が決める。ところで、貴金属で人のようにしゃべったり、歩いたりするものを作るように命令する。四十日の時間を与える。もし、失敗したらお前の命はないぞ」そういうと、屋敷の方へ帰っていきました。
このことは、人々をあわてさせました。しかし、王さまが恐いばかりで何も言うことができません。細工師は王さまの力を弱めたいと考えました。
一ヶ月が過ぎても王様の要求したものは出来ません。鉄を溶かす仕事は時間がかかるのです。細工師は望みを断たれてしまいました。友人たちに別れを告げると旅にでました。

旅の途中で、ある村に着きました。そこで昔、友人だったムトングジャに出会いました。彼は呪術師でした。彼は細工師に聞きました。
「お前さん、何か元気がないようだ。どうしたのだ?」細工師は今まであったことを話して聞かせました。友人は大笑いし、細工師に言いました。
「明日、王さまのところへ戻りなさい。そして王さまに言いなさい。もし金属で作った、歩いたりしゃべったりするものを欲しいなら、袋に二つの炭、その炭は奥さんたちの髪の毛でつくったもの、それと子供たちの涙を缶に二つ持ってきなさいと」
そういうと彼はどこかへいってしました。
細工師は友人の呪術師のことを信頼していましたが、このことをほんとうに実行したら、王さまを怒らせることになると考えました。
しかし、あと十日で命が無くなることを思えば、呪術師に言われたものを提供するよう王さまに申し出ることを決心しました。
次の日、細工師は法廷に出廷しました。大臣と王さまは細工師を見ると「有名な細工師よ、命令したものはできたのか?」「王さま、まだ出来ておりません。」細工師は恐る恐る言いました。
「なぜならば、その生き物を作るには必要なものがあります」「一体、何が必要なのか言って見なさい。欲しいものはなんでも持ってきてやろう。おまえの命は私のものだから」と細工師に王様は言いました。
「私の必要なものはそんなに大きい品物ではありません。もし、あなたがしゃべったり、あるいたりするものが欲しかったら麻袋二つに奥さんたちの髪を炭にして詰めること、もう一つは、缶二ついっぱいにあなたの子供たちの涙を集めてきてください。期限は一週間です。」と細工師は言いました。
人々はこれを聞くと驚き、細工師はすぐに殺されるのではないかと心配しました。
しかし、王さまは「一週間以内で言ったものはすべてそろえる」王さまは屋敷に帰ると、言われたものを用意しようとしました。
彼は六百人の奥さんの髪の毛をそり、燃して炭にし、千人の子供に缶二つ分の涙を持ってくるように命令しました。この命令により、王さまの妻たちは朝から晩まで一週間の間、髪をそり、炭にし、子供たちの涙も集めました。しかし、一週間が経ってもまだ、集まりません。大臣たちにこの仕事を続けるように命令しました。大臣たちは王様に六十袋の髪の毛を集めたと報告しました。しかし、燃やすとこぶしくらいの大きさにしかなりませんでした。涙は、おわん一杯くらいしか集まりませんでした。王様は怒りました。次の日、細工師を呼びました。
細工師は、王様がすべて集めたのかと思いました。
この日、人々はきっと細工師が困ることになると思い、法廷に駆けつけました。王様は椅子を蹴ると法廷の真中に立ち、細工師に言いました。
「おまえの言ったものは手にはいらなかった。」
細工師は王様の目をにらみつけました。
「有名で知恵のある王様よ、私の言ったものが手に入れられないとはおかしい。仕事に熱中しなかったのだ」
そこにいた人々は、この細工師の王様に対する非難の言葉を聞くと、そこがまるで、喪中であるように静かになりました。
王様は振り向いて言いました。
「私は今日、引退する。あなたは賢い。あなたは私の国の大臣になれる」
細工師は王さまに向かって腰をかがめていいました。
「ありがとうございます。私は有名になれました。しかし、友人のムツングジアの知恵なしではこのことは、ありえませんでした」
法廷にいた人々はこの言葉を聞いて驚きました。王さまはこれを聞いて感心しました。「このムツングジャを法廷に連れてきなさい。今日から、大臣の一人にしよう」そう言うと、王さまはムトングジャを迎えるために、護衛隊をつかわしました。
ムツングジャは大臣になり、王様は性格を変え、国民は親しみを持ち、尊敬するようになったということです。
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# by sungura | 2009-08-20 17:30

アフリカの民話III~グンボのお話

グンボのお話

昔々、ンブリの王様の領土は飢えが広がっておりました。
ムセコという町にグンボという名の男の子が母親と一緒に住んでいました。グンボは父親を亡くしたうえにすべての財産を没収されてしまいました。
毎朝、グンボは食べ物を探して森ヘ出かけて行きました。森には果物、鳥のたまご等がありました。母親はそれらを町に行っては売リ歩いていました。
ある日、グンボが家に戻ると、母親が思い病気になっていました。グンボは急いで母親をベッドに寝かせ看病しましたが、そのかいもなく亡くなってしまいました。グンボはたいそう悲しんで朝から晩まで泣きつづけました。二日目になってようやく泣き止みました。そして泣いてばかりいてはだめだ、これからどうやって生きていくか、その方法を考えた方がいいと考えました。
すると、グンボは突然、ムネカンドという男がいつも家畜小屋のそばの小さい道を通ることが頭に浮かびました。ムネカンドは大金持ちで、牧場を持っていて毎日たくさんの家畜を連れて歩くのです。ムカンドはこの国の王様のンブリと仲が悪く、いつも言い争っていました。なぜかというと、ンブリの王様はムネカンドの財産を横取りしようとしていたからです。
三日目の朝、グンボは母親の遺体を背負うと牧場のところまでやってきました。そしてそこに棒を立て遺体をしばりつけました。
それから、グンボは母親の遺体が見える見晴らしのいい丘まで登って行きました。まもなく、牧童たちがやってきました。家畜は牧童たちの後ろから小道を歩いていました。グンボは静かに母親の遺体を立てかけ、家畜の群が小道に入って来るように導くことにしました。
そして、家畜の群が近づくと大声で叫びはじめたのです。
「走れ、走れ、牧童たちよ、家畜を追い立てろ、母親にさわらせるな」しかし、その言葉を言い終わらないうちに、たくさんの牛や、やぎが母親の遺体を立てかけておいた所に突進し、母親の遺体を踏み荒らして走り出しました。
グンボは母親の遺体を立てかけた場所にかけてくると、いきなりひざまずき、遺体に抱きついて泣き出しました。泣き声を聞いた牧童たちはそこへかけつけました。彼らの中に大きな驚きが広がりました。
「私は家畜だけを追い立てるといったはずだぞ。しかし、おまえたちはおしゃべりに夢中だった、私の言うことを聞いていなかった。おまえたちは私の母親を踏みつけて殺してしまったではないか。私はこれからすぐに王様のところへいってこのことを訴える」グンボは泣きながら言いました。牧童たちはこのことを聞くとは王様に復讐されると思いました。彼らの主人、ムネカンド自身まで復讐されると思いました。そこでグンボに百頭の牛を差し出すから、どうか王さまのところへは行かないように懇願しました。
しかし、グンボは断りました。断られるとさらにもう百頭の牛を差し出すといいました。それでもグンボは断り、母親の遺体を背負うとそこを去って行きました。
グンボは急いでムネカンドの所へ行き、今まで起こったことを説明しました。決して牧童たちがうそをついていないことも付け加えました。ムネカンドもまた、千頭の牛を差し出すから王様のところへ行くのをやめるように懇願しました。しかし、断りました。ムネカンドは次々と申し出ました。畑を欲しいだけ差し出すとも言いました。しかし、グンボは断りました。そこで、ムネカンドは
「聞いてくれ、私の家畜を牧場から出して、大きな囲いの中に入れ、そして私がレモンを差し出したら、それを投げてください。レモンが落ちたところがあなたの取り分です」
グンボはそれを聞くと納得しました。夕方、大きな家畜の群れは囲いの中に集められました。レモンを投げました。グンボは大きく息を吸うと、レモンを持ち上げ、力強く投げました。レモンは群れの真中に落ちたのです。ムネカンドは牧童たちに群れのすべてをこの男に差し出し、残った家畜は小屋へ移すように命令しました。
グンボはそれ以来金持ちになり、ゆうゆうと暮らしたということです。
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# by sungura | 2009-08-20 17:29

アフリカの民話III~いばりや毛虫のお話

いばりや毛虫のお話

ある暑い日、毛虫が水を飲みに川の方へ下りていこうとしていました。太陽がじりじりと照りつけており、日差しをさえぎる日陰などは見つかりませんでした。しばらく歩いていると突然、道のところに穴があるのを見つけました。そこで少し休もうと穴の中へ入って行きました。穴の中には食べ物と水が置いてありました。毛虫は食べ物を食べ、水を飲んで、のどの渇きをいやし、深い眠りに落ち入りました。
まもなくすると、散歩から帰ったうさぎが穴に戻ってきました。
穴はうさぎの家だったのです。戸口のところまで来て驚きました。
「許しも無く私の家に入るとはどういうことだ」うさぎは大声で叫びました。
穴の中にいる毛虫は聞こえないふりをして眠り込んでいました。
もう一度うさぎはもっと大きい声で「私の家に無断で入っているのは誰だ?」
毛虫は恐がりやでしたが、少し考えてうさぎを驚かせてやろうと思い、大声で叫びました。
「私は英雄だ。この国の英雄だ。たった一本の指で象を仕留めることができるし、私の足でサイを一突きにすることもできる」これを聞いたうさぎは恐くなり、穴から素早く走って森のところまで逃げました。
「ジャッカルさん。あなたは私の友達でしょう。どうか私を助けてください」うさぎはへとへとになって森に住むジャッカルに助けを求めました。
「私の家に大きな動物が入り込んでいるのです。どうか一緒に来て追い出してください」
森の精は、うさぎをかわいそうに思い、申し出を断りませんでした。ウサギの穴につくとジャッカルは大声でさけびました。
「ウオー、ウオー、私の友人の家に入って何をしているのだ。もし出てこなければ、お前の骨をしゃぶってやる」毛虫はジャッカルの大声を聞くとますます大声で叫びました。
「私は英雄だぞ。海の精霊の子孫なのだ。たった一本の指で象
を倒し、体毛の一本でサイを倒せる」これを聞いたジャッカルはうさぎをふりかえって言いました。
「聞いたか?うさぎさん。この動物はとてつもなく怒っている。襲ってくる前に退散した方がいいぞ」
そういうとうさぎとジャッカルは森へ走って逃げて行きました。
このことを知った毛虫は穴の中で大笑いをしました。
うさぎとジャッカルは森の中でライオンに出会いました。うさぎは嬉しくなりました。なぜってライオンを恐がらない動物はいないと思っているからです。うさぎはライオンに今までのことを話ました。ライオは正義感の強い動物です。うさぎの話を聞くと協力を申し出ました。
三頭の動物が穴のところに集まりました。ライオンは自慢の唸り声をあげました。「私は動物の王様である。命令だ。うさぎの穴からでてこい」これを聞くと毛虫はライオンよりも大きな声で「ライオンとそこにいるすべての動物よ。私が襲う前にそこから立ち去れ。私は英雄だ。海の精霊の子孫だ。一本指で象を倒すことが出来るし、体毛一本でサイも倒すことができる」
ライオンはそれを聞くと恐くなり、その場所から逃げて行きました。毛虫が優勢になったあと、うさぎはライオンにまかせておけないと考えました。しかし、ライオンを除けば強い動物は見当たりません。
うさぎはそこに住むことをあきらめ別の穴を探そうと歩いて行きました。
すると、途中でサイに出会いました。うさぎは利口でした。
「サイのお兄さん、おまえさんは森にいるどの動物よりも強いという森中のうわさだよ。私の穴の中に何か小さなものがはいったようだ。出てくるのが嫌なのか出てこないのだ。どうか追っ払ってはくれまいか」サイはこんなにほめられたのは始めてでした。
うさぎとサイは穴のところまでやってきました。ライオンは少し離れて何が起こるか聞いていました。サイは穴から少し離れたところで足を鳴らし地面をゆすりました。それを三回やったあと叫びました。
「穴の中にかくれているやつ、出てこい」
穴の中で震えていた毛虫は気を取り直して答えました。
「大きなことを言うな。やれるものならやってみよ。私は英雄だぞ。海の精霊だぞ。私は指一本で象を、体毛一本でサイを倒せるのだ」サイはそれを聞くと恐くて、汗が出てきました。怒ってうさぎのところへ行くと「一体この動物の正体は何だ。うさぎはペテン師だ」そう言うと去って行きました。
うさぎの穴に大きな動物が入っているといううわさは森中に広まり、首の長いキリンや、鳥や虫さえもやってきました。
日没になって象はいつものように水を飲みに川のところまでやってきました。象は一人で声のするうさぎの穴のところまでやってきました。それを見て集まった他の動物はもちろん、鳥や虫もびっくりしました。すると象はで大声で叫びました。
「穴のなかの動物よ、おまえは何をしたいのか」
次にトカゲが叫びました。「象さん、穴の中にいる動物が大喧嘩をしているようです。目が四十もあるらしいです」
「ほんとうにそんな動物がいるのか」ハイエナが象に聞きました。集まった動物全員が疑いはじめ、何も聞こえなかったと言いました。それから、木の上にいるふくろうが、うさぎの穴に大きな動物が入り込み出て来ないと象の耳にささやきました。象はそれを聞くと森の中には自分以外に退治するものはいないだろうと考えました。そこで穴の近くに来ると穴の中に鼻を突っ込みました。残念ながら鼻が大きすぎて入りませんでした象はやけになって叫びました。
「穴の中にいるやつ、良く聞けよ、勝手なことをやっているが象の鼻でかきまわしてやる」毛虫は答えました。
「象さんよ、たきぎに使う木の枝でも取りに行ったらどうです」「おまえさんは一体何者よ」象は軽蔑して言いました。
毛虫は同じように答えました。「私は英雄だ。海の精霊の子孫だぞ。指一本で象を倒し、体毛一本でサイを倒せるのだ」
象はそれを聞くと全員を集めました。「たとえ役に立てなくても襲われるのはいやだ」そう言って全員が立ち去りました。
小さいかえるだけが残りました。かえるが喜んで跳びはねていました。いたずら好きのジャッカルがやって来て言いました。
「おまえさんは最近、泥の中に住まなくなったと聞いているがそうか。動物がおまえを食べようと探しているぞ」かえるが聞きました。
「それはどこにいるのだ?」
カエルがそれに答えるか答えないうちにうさぎはカエルに穴の中にいる動物について説明しました。
「それは、首はキリンのように長く、鼻が四つもある。人前に現われるのが嫌いらしい」この話を聞くと、カエルは大笑いをして言いました。
「私に任せてください」これを聞くと多くの動物、鳥、虫も大笑いしました。しかし、ハイエナ、ライオン、サイ、象はこれを聞くと怒り狂い、カエルを殺してしまおうと考えました。
ふくろうが動物たちに言いました。
「カエルを軽蔑してはいけない。カエルはこの問題を解決してくれるでしょう」動物たちはそれを聞くともっと大笑いし、ふくろうを笑い者にしました。サイは怒り狂い、カエルをつかむとうさぎの穴のところに連れて行きました。
「戸をあけてみよ、失敗したら二度と出て来れないようにこなごなにしてやる。カエルは戸口のところに立つと言いました
「穴の中にはいっているやつ、出てきなさい」毛虫は大いばりで答えました。「私は英雄だ。海の精霊の子孫だ。指一本で象を倒し体毛一本でサイを倒せるのだ」カエルはそれを聞くと大笑いで大声で叫びました。
「今日はおまえさんに会いに来た。私はいつもお前さんを探していた。私は七つの海と言う名前です。海の中から生まれたのです。私はあなたの父を殴ったことがある。出てきなさい。私が穴の中に入って穴を爆破するぞ。その前に出てきなさい」
毛虫はこれを聞くと、急に大変恐くなり、丁寧に答えました。「どうか私に危害を加えないで下さい。出て行きます」これを聞くと動物全員が集まってきました。そして穴の中に何が入っているかのぞきこみました。すると穴の中に小さい毛虫が震えていました。動物たちの顔色が変わりました。怒る代わりに笑い出し、跳びはねました。毛虫は恥ずかしくなってそこから逃げて行きました。
その日から、動物たちはライオンから襲われることは無くなり、反対に笑われるようになりました。
ハイエナが今のように笑うような声を出すようになったのは、毛虫が象やサイ、ライオンと仲良くなったことを笑うようになったからだということです。
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# by sungura | 2009-08-20 17:27

アフリカの民話III~老ガメのたくらみ

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ムリンガという山奥に精霊が住んでおりました。
精霊は、面白くてワクワクするようなお話しをたくさん知っていることで有名でした。都の王さま、大金持ち、勇敢な兵士でさえ精霊のお話しを買いたいと申し出ました。しかし、その度に、精霊は難しい質問に答えるよう要求してきました。彼らのほとんどがこの要求には答えられず、命さえも落としました。老ガメはこの話を聞くととても興味を引かれ、精霊に会うためすべてを捨てて旅にでました。
ムリンガの山頂に着くと、老ガメは精霊に言いました。
「私はあなたの話しを聞きに来ました」
それを聞くと精霊は内心、老ガメを食べてしまおうかと考えました。そして食べ終わった時の言いわけまで考えていました。
精霊は老ガメを軽蔑して言いました。
「老ガメよ!おまえは、何を追っかけているのだ?」
「私は、あなたに言ったはずです。あなたの話しを買いに来たのです」
といささか怒って答えました。
精霊は老ガメをじっと見ながら、ののしるように答えました。「お前は私の話しを買ってどうしようというのだ。お前は足が短いし動きが遅い。ニワトリの方がましだ。そんなやつが私の話を買うことができるのか?」
こう言われても、老ガメは全く動じませんでした。
「私はあなたの話しを買うために来たのです。時間を無駄にしたくはありません。だからいくらで売ってくれるか早く言ってください」
精霊は笑って言いました。
「老ガメ、良く聞けよ。私の要求はむずかしいぞ。私の話を買おうとして、都の王様、金持ち、勇敢な兵士でさえ失敗して命を落としている。私の話しを買うという考えは捨て、すぐにここから立ち去りなさい」
「私はその話を買いたいのです」老ガメはためらわずに答えました。
「もし失敗したらどうするするつもりだ」
「失敗したら私の頭でもお腹でも食べて下さっていいです」
精霊は老ガメの大胆さに驚き、老ガメの気持ちを変えることは不可能だと考えました。
「それなら黙って聞きなさい。もし私の話しを買いたいのなら、大蛇の王様、豹の王様、軍隊蜂の女王、海の精霊の王様すべてを連れてきなさい。それも、一週間以内だ。間に合わなければおまえの頭と腹はいただくぞ。」
老ガメは精霊を見つめました。
「よし、わかった。すべてのものを持ってきましょう。失敗したら私の妻と子供も差し出します」
老ガメは家に着くと妻に今までのことをすべて話しました。「お前さんの行動はなんて愚かでしょう。精霊の欲しいものはどれをとっても全部危なくて手にいれるのは不可能です。お前さんは殺されてしまいます。精霊の話しって一体どんな価値があるんですか。お前さんはいつの間に約束してしまったの」と泣き出しました。
老ガメは妻をなだめて言いました。
「心配はいらない。精霊の要求を成し遂げる方法をすでに考えてある。それについてはお前にお願いがある。お前の助けが必要だ。私の頼んだことをやってくれればいい」
やがて老ガメは妻と一緒に家を出ました。しばらくして大蛇の王様が住む川辺に着きました。そしてバナナの葉っぱ十枚を切るとそれでたくさんのひもを作りました。
少し行くと、老ガメと妻は川べりで太陽に当たってのんびりと夢を見ているような姿の大蛇の王様に出会いました。
老ガメの奥さんは乾いた草をゆすりながら、大蛇に向かって大声で一人ごとを言い始めました。
「私の旦那様、あなたは世間でいう美しいことと醜いことの違いがわかりますか。よく見てごらんなさい。あの動物の醜い顔、サイの方がよっぽどましでしょう。そしてあの体の長さは何でしょう。それにしても、最近あなたは年をとってきました。体の長さもバナナの葉っぱと比べると何と短いことか。見てごらんなさい。
大蛇が体をくねらせはじめたようです。しっぽがどこにあるかわからないくらいです」
老ガメが妻に言いました。

「私が思うには、大蛇が体を伸ばしたら力が弱くなる。バナナの葉っぱ一枚の長さにも満たない」
この会話を聞いていた大蛇の王様は振り向いて言いました。「お前達は、どうして口げんかしているのだ」
老ガメは恐くて体を震わせながらも言いました。
「大蛇の王さま、口論しているのは私の妻です。妻は毎日あなた方はバナナの葉っぱ十枚ほどの距離を歩くのに比べて、私たちは、わずかバナナの葉っぱ一枚ほどの距離も歩クコとができません」
大蛇の王様は老ガメの言ったことに大笑いしました
「そう思うなら測って見れば良いではないか」
老ガメは草をもって大蛇の王様の所へ行き、背中を横倒しにすると、体を真っ直ぐに伸ばすように言いました。
大蛇の王様は、老ガメの言うように用心しながらゆっくりゆっくりと体を伸ばし始めました。カメの夫婦はいらいらして
「まだか、まだか」
とせかせました。
「もう少し待ってくれ、早く測ってくれ、もう少し伸ばすから」と言い終わるか言い終わらないその瞬間、老ガメと奥さんが大蛇の王様をひもで強く縛ってしまいました。
「まだ終わらないのか、早く終わってくれ、少し休ませてくれ、体を伸ばすのに疲れてしまった」
大蛇の王様は疲れ果て、老ガメに頼みました。
老ガメは振り返って言いました。「あなたは、もう体を折り曲げることはできないぞ。私の言いなりになって、あなたはなんて愚かだろう。これからあなたをムリンガの精霊のところへ連れて行く。ムリンガの話は私がもらうことになる」
大蛇は老ガメに放してくれるように懇願しました。しかし、彼は聞き入れず、また旅を続けました。
ムリンガの山頂につくやいなや精霊は老ガメに言いました。
「あと約束のものを持ってこい」
老ガメはすぐに家に帰りました。家に着くやいなや、鎌と斧を持ってくると、豹が獲物を獲っている場所まで一気に走っていきました。
そこで、老ガメは長い横穴を掘りました。そして見えないように草で上手にふたをしました。二日め、老ガメはひょうたんにお酒を入れ、正午の祈りの時間にあわせて、ひもを持って横穴へ入っていき、待ち伏せました。しばらくすると、豹の王様がやってきました。
「お前さんはそこで何をしているのだ」豹の王様はしゃべろうとするのですが、のどが渇いていたので声がかすれていました。
老ガメは言いました。
「豹の王様、あなたはのどが渇いているようですね。私が作ったお酒を飲ませてあげましょう。」
豹はそのひょうたんを受け取ると飲み始めました。老ガメに少しの飲むようにいわれたにもかかわらずのどの渇きは激しく、酒は美味しかったので全部飲み干してしまい、死んだように寝てしまいました。
老ガメは、近くの穴に隠れて見ていました。豹がいびきをかいているのを聞くと、すぐさま豹の王様をムリンガの精霊のところまで背負っていきました。
ムリンガの精霊は豹の体にさわると
「よくやった。もうひとつのものをもってこい」
老ガメは家に帰ると人形を作り、ドリアンの実からしぼったどろどろの液を塗りました。
次の日早く、海岸までその人形を持って行きました。海の精霊の王様の娘は草をいじりながら遊んでいました。老ガメは砂の上に人形を横たえて美味しいさつまいもの入った器を置きました。
海の精霊の王様さまの娘と他の精霊たちが砂浜で遊んでいました。彼らはその人形を見ると少しずつ動かしながら、人形に話しかけました。しかし人形は黙っていました。人形はさつまいもで作ってありました。海の精霊の王様の娘も他の精霊たちもさつまいもが大好きでしたので食べようとして言いました。
「その人形を起こして、顔を平手打ちすればいい」
海の精霊の王様の娘はその人形に平手打ちをしました。すると手がくっついてしまいました。放そうとすると、もう一方の手もくっついてしまいました。海の精霊の王様の娘はどうにかして手を放そうとするのですが出来ません。他の霊の娘たちが言いました。
「足で人形の腹を蹴ってみたら」
そういわれて右足で蹴りました。左足でも蹴ってみました。とうとう両足がくっついてしまったのです。
隠れてみていた老ガメは精霊の娘の姿を見ておかしくなりました。そして隠れていたところから出て浜の方へ歩いて行きました。海の精霊の子供たちは老ガメを見ると逃げていってしまいました。
老ガメは海の精霊の王様の娘を背負うとムリンガの精霊の住む山へ行きました。いつものようにムリンガの精霊は海の精霊の王さまの娘にさわると
「わかったぞ。よくやった。約束した残りのものを持ってこい」
と命令しました。
老ガメは一目散に家に帰りました。家に帰ると妻に大きいひょうたんを持ってこさせ、急いで女王蜂と兵隊蜂が住んでいる巣の近くまで一気に突進しました。怒った兵隊蜂が老ガメを刺そうと巣の近くまで来ていました。老ガメは叫びました。
「私は何もしません。あなた方を助けにきたのです」
兵隊蜂は老ガメの言うことを信じません。女王蜂は老ガメの叫びを聞き、何が起こったのか説明するように言いました。
老ガメは、蜂の女王のところに着くと蜂蜜をもらいました。
「おお前は何をさがしているのだ」老ガメは女王蜂を見ながら
「私はあなたを救うためにやってきました」
「私は兵隊蜂をもっている。お前さん何のために私を救いに来たのだ」
「女王蜂よ、聞きなさい。もっとすごい敵がいるのを知らないのか」
老ガメは続けて説明しました。しかし女王蜂は老ガメの言うことに関心を示さず、強気に聞きました。
「もっと強い敵って何だ」
「女王蜂よ。それは火だ」
「火か?それはたいへんだ。我々は襲われてしまう。しかし、カメよ、お前たち、どうしてその事を知っているのだ」
女王蜂は聞きました。老ガメは女王蜂を遠ざけると説明しました。
「昨日、畑から家に帰ると、火の夫婦に会いました。火は今晩攻めに来ると言っている。だから、早くあなたに知らせようと考えたのです」
女王蜂は震えながら老ガメに訪ねました。
「おまえは私たちを助けてくれるのか?」「私は大きなひょうたんを持ってきた。お前さんの兵隊が中に入ったら、火はどこからも入ってくることが出来ないし、ひょうたんは硬いから破れることはない」
言い終わるか終わらないうちに女王蜂は兵隊蜂にひょうたんの中に入るように命令し、最後に女王蜂も入りました。全員が入ると老ガメはとうもろこしのからでひょうたんの口をふさいでしまいました。すぐにムリンガの精霊のところに行きました。老ガメの奥さんは妊娠していました。
ムリンガの精霊は老ガメが背負っているひょうたんを見つけました。そして老ガメの奥さんと子供たちも一緒でした。精霊はお話のいっぱい詰まった箱を持って来ました。そこで老ガメは精霊に聞きました。
「私は女王蜂とその兵隊蜂と、私の母親と子供も連れて来た」
精霊は老ガメに微笑むとひょうたんにさわり、お話のいっぱい入った箱を差し出しました。これを持っていきなさい。今日からこれらのお話はすべてお前さんの財産だ。よくやった」
老ガメはその箱を家に持って帰りました。しばらくすると、そのニュースは国中に伝わり、それを買いに来たり盗もうとさえするものが現われました。
それ以来、カメは背中にいつも箱を背負っているような格好になってしまい、いつも箱が気になって首を上げ、あたりを見回しているようになったということです。
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# by sungura | 2009-08-20 17:26

アフリカの民話II

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1971年から2年間、青年海外協力隊員として東アフリカのタンザニアで生活しました。それ以来、アフリカ大好き人間になりました。スワヒリ語を忘れないためにタンザニアのお話を訳しはじめました。アフリカにはたくさんの動物がいて人々の生活とかかわりが深いように思いました。
このお話の主人公はカメで、日本のお話に登場するおとなしカメの印象とは違い、ずるがしこい動物として取り上げられています。子供さんに読んで聞かせるにはいい本だと思います。
1冊送料別で600円で販売しています。よろしくお願いします。
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# by sungura | 2009-07-16 17:34